
Kroll アフリカ・ニュースレター – 2025年6月号
ビジネス
コンゴ民主共和国 — 米国の採掘スタートアップのKoBold Metalsは、南東部のManonoリチウム鉱山を採掘する豪採掘企業AVZ Mineralsの株式を取得し、コンゴ民主共和国での活動を拡大した。この合意は、コンゴ民主共和国の当局が2023年にAVZの鉱床採掘権の一部をはく奪し、中国の多国籍採掘グループ企業のZijin Miningへの付与を決定したことを発端とするAVZ Mineralsと当局の長年の紛争に終止符が打たれる。コンゴ民主共和国当局は今年初め、東部国境での武力紛争を受け、安全保障及び政治的支援と引き換えに米国との経済関係を強化することに関心を示していた。KoBold Metalsは、6億6,900万トンのリチウム資源を含むと推定されるManono鉱床の開発に10億米ドルを投じる予定である。
シエラレオネ — シエラレオネ最大のダイヤモンド採掘会社であるKoidu Limitedは数か月間にわたる労働争議による緊張の高まりを受けて、国内における採掘の停止を発表した。2024年12月に賃金をめぐり初のストライキが発生し、交渉が決裂した2025年3月に操業を再開していた。そして同国のファティマ・ビオ大統領夫人が労働者支援のために介入したことで、Koidu Limitedと親会社のOCTÉA Limitedはビオを法的措置で脅すに至り、その後2025年5月までに、シエラレオネ労働省はKoidu Limitedで働く1,000人以上の解雇通知を受領し、同社は操業停止を余儀なくされた。Koidu Limitedは年間約1億米ドルの輸出するダイヤモンドを産出しており、鉱山の閉鎖は地域経済を不安定にし、世界のダイヤモンドサプライチェーンを混乱させるリスクがある。Koidu Limitedの声明において、同社マネージングディレクターのGustaf Fredrik Bodinは操業を再開するために2,000万米ドルが必要になると述べた。
ガーナ — ナイジェリア最大の砂糖生産企業のDangote Sugar Refineryはガーナの簿の地区において大規模な砂糖プロジェクトの開発を発表した。Dangoteグループは2024年次報告書において、セネウェスト地区に建設予定である最新鋭の製糖工場のプロジェクトの実現可能性調査及び初期投資計画の策定を完了したと発表し、サトウキビの圧搾能力は1日あたり1万2,000トンと発表されている。Dangoteグループと東ボノ地域調整評議会との戦略的パートナーシップの枠組みの中で構想されたこのプロジェクトは、地元の精糖産業の発展が期待されている。また、Dangoteグループは、西アフリカ最大の財閥の一つであり、創業者でCEOのAliko Dangotehaはアフリカで最も裕福な個人である。
ケニア — ケニアの大手通信事業者であるSafaricomは、iXAfricaと提携し、同社が新たに建設したNBOX1ハイパースケールデータセンターを活用して、企業向けデジタルサービスとクラウドスイートを提供する。戦略的パートナーシップにより、SafaricomはiXAfricaが2024年2月に完成したこのデータセンターを活用し、人工知能(AI)の開発や、高度なワークロードをコンプライアンスに準拠した迅速な運用が可能になる。iXAfricaのガイ・ウィルナー会長は、この提携について、「当社の専用に構築された世界クラスのAI対応インフラと、Safaricomの比類のない市場プレゼンスおよび顧客関係を組み合わせることで、地域全体のイノベーションと成長を加速させるデジタルエコシステムを構築する」と述べた。
経済及びマーケット
アフリカ地域 — 国際通貨基金(IMF)は、2025年のアフリカ経済成長率予測を4.2%から3.9%に修正した。IMFは声明で、「世界経済の見通しの急激な変化が、この地域の成長モメンタムを阻害した」と指摘し、外的ショックによって、アフリカ諸国が公的債務削減とインフレ抑制で達成してきた進展が帳消しになる恐れがあると指摘した。世界的な貿易混乱の中、IMF の声明は、アフリカ諸国に対して、2018年3月に著名されたアフリカ大陸自由貿易協定(AfCFA)を通じて、貿易統合を強化するように求めている。また、サハラ以南のアフリカ諸国の1,800品目の製品を米国に関税なしでの米国への輸出を認める米国のアフリカ成長機会法(AGOA)は、更新が行わなければ2025年9月に失効される。
コンゴ民主共和国 — キンシャサの政府当局は、「市場における需給バランスの確保」のために、現在のコバルトの輸出禁止措置が6月に終了した時点で、コバルトに厳しい輸出措置の導入を検討していると発表した。コンゴ民主共和国政府は、電気自動車用バッテリーの主要部品であるコバルトの市場価格の下落を受けて、2月に4ヶ月間の輸出禁止措置を導入した。コバルト価格は2024年を通して下落し、2016年以来の最低水準に落ち込んだ。この禁止措置は、コンゴ民主共和国でコバルトを生産する外国の採掘会社から批判を受けている。コンゴ民主共和国は世界最大のコバルト生産国で、世界生産の84%以上を占めている。コンゴ民主共和国最大のコバルト生産企業の一つであるEurasian Resources Groupは、2025年3月に不可抗力を宣言し、コンゴ民主共和国の子会社Metalkol RTRからのコバルトの供給を停止した。世界最大のコバルト生産企業であるである中国のCMOCグループは、禁止措置の解除を公式に要求している。
西アフリカ — 地域証券取引所のBourse Régionale des Variousurs Mobilières(BRVM)と地域投資ファンドのAfrica50は、西アフリカインフラプロジェクトへ地域資本を注入することを定めた協定を締結した。この協定により、西アフリカ経済通貨同盟加盟国の8カ国(ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、ギニアビサウ、マリ、ニジェール、セネガル、トーゴ)を対象とするBRVMを通じて、インフラに特化したプロジェクト債が発行される。この新しい金融商品は、西アフリカの民間投資家や機関投資家が、地域のインフラ整備により直接投資できる仕組みとして機能する。BRVMのCEOは今回の合意について、「アフリカ大陸のインフラ変革の資金調達において、アフリカ資本市場が決定的な役割を果たす時が来た」と述べた。
タンザニア — タンザニアは、マラウイと南アフリカとの貿易紛争に関する外交閣僚協議を促進するため、両国からの農産物輸入禁止措置を解除した。この禁止措置は、タンザニア政府当局が輸出制限をしているとみなされたことに対する報復措置として導入されたものの、1週間も続かなかった。マラウイは3月にタンザニアからの米、バナナ、小麦粉、ショウガ、トウモロコシの輸入を停止し、南アフリカは現在タンザニアのダルエスサラームから出荷されるバナナの輸入を禁止している。海外からの輸出品がタンザニアの港を経由することが多い内陸国のマラウイにとって、タンザニアが導入した禁輸措置は重要な貿易ルートが遮断されることとなった。
東アフリカ — 東アフリカ共同体(EAC)の中央銀行総裁らが、ケニア・モンバサにて第28回金融問題合同会議(28th Joint Meeting on Monetary Affairs)を開催した。EACは、コンゴ民主共和国、ソマリア、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、南スーダン、ウガンダ、タンザニアの8カ国から成る地域政府間組織である。本会議において、総裁らは「EAC域内越境決済システム・マスタープラン」の採択に合意した。同マスタープランは、越境取引の効率性向上およびコスト削減を目的としており、域内の資金フローを円滑化することで、地域内投資および貿易の促進、さらには海外仲介機関への依存度の低減が期待されている。また、同マスタープランには、将来的な地域共通のデジタル通貨導入に向けた構想も盛り込まれている。EACは2005年より、域内において人、物、サービス、資本の自由な移動を可能とする共通市場を構築してきたが、依然として高い取引コスト、決済の遅延、規制の不統一といった課題が越境決済の障壁となっている。
法規制
ギニア — ギニア政府は、同国北西部におけるエミレーツ・グローバル・アルミニウム(EGA)の鉱業ライセンスの撤回手続きに着手した。EGAはアブダビおよびドバイの政府系ファンドが共同保有する企業であり、同社がギニア国内にアルミナ精錬所を建設するという契約上の義務を履行していないと政府当局は主張している。EGAは現地子会社であるギニア・アルミナ・コーポレーション(GAC)を通じて、約4億トンのボーキサイトを埋蔵する690平方キロメートルの鉱区を運営しており、これは国内最大級のボーキサイト鉱山の一つである。ギニア政府とEGAの対立は2024年10月に始まり、当局が関税に関する懸念を理由に同社のボーキサイト輸出を禁止したことが発端となっている。ギニアは世界第2位のボーキサイト輸出国であり、EGAはこの輸出停止が2024年の年間純利益を23.5%押し下げた要因の一つであると説明している。2025年5月に発表された声明において、GACは「事態の迅速な解決」に向けた交渉再開の意思を表明している。
ナイジェリア — アブジャの連邦高等裁判所は、暗号資産取引所バイナンスとナイジェリア政府との間で係争中の訴訟の審理を延期した。ナイジェリア連邦内国歳入庁(FIRS)は、バイナンスに対し、経済的損失による795億米ドルおよび暗号資産取引による未納の法人税20億米ドルの支払いを求めている。FIRSは、ナイラ建ての取引プラットフォームを提供していたバイナンスが通貨の不安定化を招き、同国の外貨危機を一層深刻化させたと主張している。この訴訟は、ナイジェリア政府により2025年2月に提起されたものである。これに対しバイナンスは、当局との協力および未払い義務の履行に前向きな姿勢を示している。アナリストらは、本件をナイジェリア政府が現地拠点を持たない外国の暗号資産取引所に対する規制強化を目指す中での重要な判例と位置付けている。なお、バイナンスは2024年にも、ナイジェリアの経済金融犯罪委員会(EFCC)よりマネーロンダリングの容疑で起訴されたが、同年10月に訴追は取り下げられている。
ケニア — ケニア税務控訴審判所は、Betwayブランドをケニアで展開する企業Bluejayに対し、ケニア歳入庁(KRA)への税負担として50億ケニア・シリング(約56億円)の支払い義務があるとの判決を下した。裁判所は、Bluejayが争点となった税負担、特に賭博配当金に関する納税額について、合理的な説明を提示できなかったと認定した。この敗訴は、Bluejayが2025年5月初旬にミリマニ裁判所の商務・税務部門へ任意清算の申立てを行った直後に発生したものである。Betwayは、ケニア国内で急成長を遂げる賭博市場において主要な事業者の一つである。Bluejayの経営破綻は、厳しい財政環境を理由に撤退した他の大手賭博企業、例えばBetsafeの事例に続くものである。
南アフリカ — フィリピンを拠点とする港湾運営企業インターナショナル・コンテナ・ターミナル・サービシズ(ICTSI)は、デンマークの物流企業マースクとの法的紛争の文脈において、南アフリカ国営の物流インフラ企業トランスネットとの提携関係を改めて確認した。4月末にクワズール・ナタール高等裁判所で審理が再開されたことを受け、ICTSIは「ダーバン・コンテナ・ターミナル第2埠頭において、運営効率、透明性、信頼性の向上をトランスネットと共に実現することに引き続き尽力する」との声明を発表した。マースクの子会社であるAPMターミナルズは、2024年10月にICTSIを提訴し、同社が財務健全性比率の要件を満たしておらず、ターミナル運営の入札条件を履行していないと主張している。ICTSIは、この法的争いによって生じた遅延に対する懸念を表明している。ダーバン・コンテナ・ターミナル第2埠頭は、南アフリカ最大のコンテナ施設であり、ICTSIとトランスネットによる共同事業は、戦略的に重要なダーバン港の近代化を目指す一連のプロジェクトの第一弾と位置付けられている。
ザンビア — ポール・カブスウェ鉱山・鉱物開発大臣は、鉱業企業コンコラ・カッパー・マインズ(KCM)と電力会社カッパーベルト・エナジー・コーポレーション(CEC)に対し、継続中の債務紛争を裁判外の調停によって解決するよう促した。この発言は、KCMがCECに対して未払いの電力料金として負っている2,690万米ドルの債務のうち、35%の支払いに合意したことを受けてのものである。支払いは、ザンビア高等裁判所が承認した債務整理スキームに基づいて実施されたものであり、同国の控訴裁判所がKCMによる差押品の売却および強制執行の停止申立てを却下した後に行われた。
政治
ブルキナファソ — ジャン・エマニュエル・ケドラオゴ首相は、外国資本による鉱山のさらなる国有化を進める方針を発表した。この決定は、昨年改正された鉱業法に基づくものであり、同法では国家の鉱業セクターへの関与義務が強化され、国営鉱業会社「ソシエテ・ド・パルティシパシオン・ミニエール・デュ・ブルキナ(SOPAMIB)」の設立につながった。資源ナショナリズムの波が地域全体に広がる中、隣国のマリおよびニジェールも昨年、自国の鉱業法を改正している。SOPAMIBは、英国のエンデバー・マイニングが保有していた2つの金鉱山の管理権をすでに取得している。
カメルーン — 1982年から政権を担うポール・ビヤ大統領は、2023年10月に署名され、2025年4月にカメルーン上院で承認された中国との所得税条約を正式に批准した。本条約は、二重課税および租税回避の防止を目的としており、両国間の経済協力を強化し、対外直接投資の促進を図るものである。中国からの投資は、ナチガル水力発電所やヤウンデ‐ドゥアラ高速道路(フェーズ2)など、カメルーンにおける主要インフラプロジェクトの資金調達において重要な役割を果たしてきた。2023年時点で、中国に対する財政債務は、カメルーンの二国間債務の64.5%、対外債務全体の26.2%を占めている。今回の条約批准により、カメルーンは15か国との間に二重課税防止条約を締結したことになる。
コンゴ民主共和国(DRC)及びルワンダ — 両国は、2025年4月にワシントンD.C.で開催された外相会談およびマルコ・ルビオ米国務長官との協議を受け、先月初旬に米国政府へ和平案の草案を提出した。現時点では、DRCおよびルワンダの提案は統合されていないと報じられている。
今回の和平合意案は、この数ヶ月でルワンダの支援を受けたM23反政府勢力による東部コンゴでの領土拡大を背景とするものである。米国政府は、今後2カ月以内に和平合意が締結されることを期待しており、これに付随する形で、DRCの鉱物資源に対する数十億ドル規模の西側投資と連動した二国間鉱物協定の締結も見込まれている。この投資枠組みには、鉱山開発の拡大およびルワンダ国内における鉱物加工施設の整備が含まれている。提案提出直後、2023年に亡命して以来初めて、DRCの元大統領ジョゼフ・カビラ氏がM23の支配地域に姿を現した。カビラ氏は、M23への支援に関連して、DRC当局から反逆罪および戦争犯罪の容疑で告発されている。