ここ数ヶ月の間に世界経済の見通しは大きく変化し、予測成長率は日に日に下方修正されています。コロナウイルスが蔓延しているためです。中国では一定のコントロール下にあるかもしれませんが、欧州や米国では明らかに状況が異なります。

経済への影響は広範囲に及んでいます。中国ではサプライチェーンが寸断され、世界全体の工業生産に大きな悪影響を与えています。需要面では観光業が崩壊しつつあり、日常生活や旅行に関する数々の制限が拡大しているため、小売業の支出やサービス業の生産が抑制されています。さらに、金融市場は2008年~2009年の金融危機に似た反応を示しています。株式市場は巨額の損失を被り、流動性が不足しています。信頼性は必然的に影響を受けます。これらすべてが将来的に不利な予兆です。米国、英国、ユーロ圏の金融政策は強硬に対応してきましたが、金利は多くの国ですでにゼロに近い(あるいはマイナスである)ため、その有効性には限度があります。英国、イタリアを除く欧州における財政政策では、ドイツが財政手段をとることに対し消極的であり、また感染に対する対応に相対的に自己満足感があることから、依然として大規模な刺激策を提示することに躊躇しています。

産出量の予測には不確実性が伴いますが、その中で最も重要なのは、ウイルスの拡散がどのくらいで収まるかを知ることです。潜在的な損失の大きさを大まかに把握するためには、おそらく、これまで感染を抑制するために最も抜本的な対策を講じた2つの国に注目するのがよいでしょう。今年の1月下旬からの中国と、3月中旬からのイタリアです。オックスフォード・エコノミクスは、2020年第1四半期の中国の経済成長への打撃は、GDPの3.5~4%程度になると推定しています。中国は機能が戻りつつあるように見え、次の半年である程度の回復が見込まれます。その結果、2020年の成長率は、COVID-19発生前の予測値6.0%から現在は4.8%に引き下げられました。イタリアの最新の予測はよりネガティブなものとなっています。第1四半期と第2四半期の前年同期比成長率は-2.2%と-5.2%と予想されており、両四半期ともに+0.3%の成長率という以前の予測に反するものです。2020年全体の産出量は、わずかに増加という以前の予測に対して2.5%の減少が予測され、本格的な景気後退に陥る可能性があります。

他の国々の予測の修正については、現時点でははるかに小さくなっています(北米と西欧州の2020年GDP成長率については、およそ-0.5%です)。健康に対する状況は世界中で急速に悪化しているため、これは楽観的かもしれません。他国も中国で採用されたような厳しい措置を、ある程度実施しなければならないと考えるのは、あり得ないことではないのかもしれません。最近のエビデンスは、人との距離を取るように課すことが一定の効果がある可能性を示唆しています。また、1918年のいわゆるスペイン風邪の米国都市での流行に関する暫定的なエビデンスは、社会的交流を減らす意図での複数の介入が、それを採用した都市で病気の感染を減らしたことを示唆しています。欧州や北米のような権威主義的ではないシステムにおいては、中国を模倣することは容易でないかもしれませんが、イタリアが道を示しています。

上記の中国とイタリアの予測修正からの概算では、他国でも同様の思い切った統制が行われるというシナリオにおいては、2020年の北米と欧州のGDPは、おそらく以前の予測から2%の引き下げとなるでしょう。これにより、今年の米国の成長率はほぼゼロまたはわずかにマイナスとなり、欧州では-1〜-1.5%の景気後退となると思われます。明らかに痛みを伴うとはいえ、この景気後退は、2009年の「大不況」で被った産出量の減少(それぞれ-2.5%と-4.5%)と比較すれは、まだ軽度に見えるでしょう。一般的なパンデミックが発生し数十万人の感染者が発生した場合には、もちろん見通しは劇的に悪化しますが、少なくとも現時点では、そのような結果になる可能性は低いと思われます。



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